2020年度神奈川県入試問題について個人的な意見を書きます【理科編】

さて、昨日に引き続き、理科の神奈川県公立高校入試問題について書いていきたいと思います。まずは、配点から。

問1 9点
問2 9点
問3 9点
問4 9点
問5 16点
問6 16点
問7 16点
問8 16点

上記のような構成となっており、2019年度と変わらない配点となっています。
しかしながら、未だに完全解答の選択問題が多くちりばめられており、2つとも合っていないと得点にならない問題が多く、中学理科の知識をしっかりと聞いてくる良い問題が多かったと思います。

【問1 物理分野小問集合】

いつも悩まされる、物理の小問集合ですが、(ア)はジェットコースターを題材にした、力学的エネルギーとエネルギー保存の問題でした。与えられた文章が長いわりには、簡単な問題であり、迷うことなく選択できる問題だったのではないでしょうか。
(イ)は磁力線の向きに関する問題でした。地球規模で考えた時に磁力線が南極から北極に向かって磁力線が出ていることが分かるかがカギとなっており、図2の電流を流した時に出来上がる磁力線は定期テストレベルの問題だったので、最初の南極、北極を間違えなければ簡単に得点できる問題でした。(ウ)はフックの法則が出題され、3つのばねに働く力とばねの伸びの関係をグラフから読み取り、ばねの伸びの大小を選ばせる問題でした。この問題も考えられた良い問題で、非常に良問でした。

【問2 化学分野小問集合】

化学分野に関しても、非常に分かりやすい知識を問う良い問題が並んでいます。
(ア)の気体の密度に関する問題も基本的な知識を問う問題で、(イ)に関しても同様、沸点の違いを問う問題、しかも水とエタノールの混合物ですから定期テストで一度は目にしたことのある問題。ただ、エタノールの沸点が約78℃であることを知識として知っていても、与えられた実験の考察からはそれが言いきれず、水の沸点は100℃であることも常識として知っているが、その事実が問題文からは言い切れないので、実験をもとに考察しなさいという現代の子どもたちへの投げかけのような問題でした。
(ウ)に関しては精錬に関する知識が出題されましたが、なんてことはない酸化物の還元の化学反応式を選ばせる非常に簡単な問題でした。

【問3 生物分野小問集合】

(ア)生物の細胞における染色体の数や遺伝子の同異を問う問題。
(イ)与えられた表からセキツイ動物の正しい記述を選択する問題。
(ウ)裸子植物(マツ)と被子植物(アブラナ)の説明として正しいものを選択させる問題。
各々、基本的な問題で絶対に落とせない問題ばかりでした。非常に簡単です。
しいて言うならば、(ア)は選択肢の文章を理解する読解力が無いと厳しい問題でした。

【問4 地学分野小問集合】

(ア)・(イ)が同一の分野で出題されたのには驚きましたが、前線の図から前線面の断面図を選択させる問題、フラスコに線香の煙と水分を入れて注射器を引いて雲をつくる実験の問題は、こちらも定期テストに出題されるレベルの問題でした。
この問1から問4までで、一番考えさせられた問題は(ウ)の現在のハワイ島付近で出来た火山は太平洋プレートが移動することで形成されたことが記載されており、年間で8.5㎝ずつ移動したとすると、何年前に海山Aができたかを計算させ、さらにその時はどんな地質年代だったかを合わせる問題でした。生命が誕生したのは約38億年前、恐竜が繁栄したのは約2億3000万年前から約6500万年前まで、人類が誕生したのは約300万年前です、これは何の知識を聞いているだろうか最初は分かりませんでしたが、中生代が約何年前のことなのかを知っているかを聞いているのだとしたら、地質時代を細かく知っていないと解けない難問だったと思います。

【問5 物理分野 音の性質】

例年通り、問5は物理分野からの出題でした。
モノコードとオシロスコープによる波形を見て考えさせる問題で、(ア)に関しては空気中を伝わった振動が、人間の身体のどの部分で受け取るのかを聞いてくる物理生物の融合した問題でした。とは言え、片方の選択肢が聴神経なので、間違えることなく鼓膜を選べていると思います。(イ)・(ウ)・(エ)に関しても、与えられた実験結果から波形がどうなるのかを考察する良問で、非常に良く作られている良い問題でした。

【問6 化学分野 電気分解】

例年通り、問6は化学分野からの出題でした。
意外だったのは、イオンに関する知識がそこまで無くても、中2までの知識で解けてしまうだろうなと思う問題でした。若干、(エ)は陽イオン、陰イオンの知識が無いと厳しいかなと思う程度で、水の電気分解と塩化銅水溶液の電気分解の実験を知っていれば問題なく解ける問題だったので、そこまでの難問ではありませんでした。

【問7 生物分野 刺激に対する反応】

例年通り、問7は生物分野からの出題でした。
ページをめくった瞬間、受験生は見たことのある実験だと、しっかり準備をしてきた子は思ったことでしょう。後に続く、ものさしを離して掴む実験も一度は見たり聞いたりしたことのある実験でした。(ア)に関しては反応が伝わる経路として正しいものを選ばせる問題、(イ)は反応に対する平均速度を求める際に、皮膚から受け取った刺激ではなく、目から受け取った刺激に対する反応は時間が違う為、実験から取り除かなければならないと言う、嫌なところを聞いてくる問題でした。(ウ)・(エ)は実験と同じ現象の反応を選ばせる問題、実験結果から正しい仮説を選ばせる問題が出題され、こちらも良問でした。

【問8 地学分野 地球の周りの星や惑星について】

例年通り、問8は地学分野からの出題でした。
まず、与えられた図1に関してびっくりしたのは、ある日の午前6時に南東の空を観察した図に、金星・月・木星・アンタレス(さそり座の1等星 注意書きあり)が記載されていたことです。ここで、しっかり勉強してきた子は疑問に思うはずです。さそり座が南東の方角に早朝に見えるのはいつの季節なのか。まず真っ先に冬を消してしまう子が多数いたことでしょう。何故なら冬を代表する星座の一つオリオン座と対極に位置するさそり座は冬には見えないと覚えている子がほとんどだからです。しかし、実際には厳密にオリオン座の対極にさそり座が位置しているわけではいないため、冬の早朝に南の空にアンタレスを観測することはできます。これはかなり厳しい知識を問いている問題で、もっと言ってしまえば、午前6時に南東の空にアンタレスが観測されるなんて、現実にはほとんどないでしょう。(もっと暗い、午前4時くらいに南の空には見えるでしょう...オリオン座が空に出現して、さそり座出てくるまで大体10時間半くらいしか差がないので起きる現象を誰が知っているんだ!、と正直突っ込みを入れたくなる問題でした)
問題作成者は昔新聞配達か何かのアルバイトをしていたのでしょうか…笑
とにかく、問8の(イ)を正確に両方選べた生徒は少ないでしょう。
その他の問題は誰しも一度は見たことのある問題でした。金星が早朝に東に向けて見えるようになっているので、明けの明星であることから選択肢はDしかありませんし、木星が外惑星であることは周知の事実ですし、火星よりも地球からの距離が遠いことも常識かなと思います。

【総評】

全体的によく考えられた良問が並んでおり、解きにくい問題も無かったのが印象です。去年よりは易化したのかなと思ってはいますが、中堅下位層の生徒は読み取れない生徒も多く居ることでしょう。若干の易化程度でしょうか。
また、全体の問題を通して言えることは、中3の知識を必要とする問題が少なく、学年末テストを前にした中2生でも十分解けるような作りになっていた気がします。
因みに、中3の知識が必要な問題は問1(ア)、問2(ウ)(若干ですが)、問3(ア)、問6(エ)(若干ですが)、問8全問。上記の(若干ですが)と記載した問題を除けば全25問中6問と、例年より2問程度少ない気がします。(若干を含めれば8問なのでそこまでですが...)
まぁ、毎年幅広い知識を聞いてくることと実験とその考察を聞いてくる形式に変更が無かったので、ここ5年の中では最も得点しやすかったのではないかと思います。
私事ですが、授業中の雑談で口走った恐竜は中生代の示準化石で6000万年前くらいまで生きていたんだよという話が役にたったかな?と思っています。
今後の対策という対策は直ぐには思いつきませんが、まずは色々なことに興味、好奇心を持ち、その上で目に見えない現象は理屈で理解していく能力が更に必要となっていくことでしょう。

☆海鋒のつぶやき☆ ㉑

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